空飛ぶ広報室(有川浩)※ネタバレあり

ここ半年くらいほとんど小説というものを読んでなくて久しぶりに小説読まなきゃなと思って読んでみた作品。

 

空飛ぶ広報室 (幻冬舎文庫)

空飛ぶ広報室 (幻冬舎文庫)

 

 

いやもう本当に有川浩さんの作品はいいですわ。何がいいって自分でポイントを上げながら説明してみると

1.題材の少しマイナー感、そのために一から題材について作中で説明し、読者に徐々に作品に入り込ませ、それからその題材の持ち味を全て持て余すことなく生かすところ

有川浩さん大好きと言いながら、自衛隊作品や最近映画化で話題の植物図鑑、阪急電車くらいしかまだ読んでないんですけど、、、ここに焦点もってくるのかあと。自衛隊はまだ題材としてわかるんですよ自分の中で。道端に生えてる植物のこととか、たった数駅しかない阪急今津線を題材にもってきて小説にしちゃうのかと。阪急電車は本当に大好きで自分も聖地巡礼をしたくちなんですけど、よくここからあれほどのストーリーをもってきたなと、本当に素晴らしい。またマイナーながらも実際にあるものを題材として使っているからリアリティがある。フィクションなんですけど、ものすごいリアリティ。これは有川浩さんが自衛隊、植物、路線周りについてもうほんっとうにしっかり勉強していて、下地が素晴らしくその上で僕たち読者にそれらを伝えてくるからなせる技。あーここ嘘っぽいなwとか無理やりかよwみたいなのがない。だから冷めないで最後までリアリティをこっちに押し付けてくる。すごいそれだけで心がガンガン動いてあーもう最高ってなる。

 

2.スポットを当ててるのは人間

当たり前じゃない?って思うかもしれないですけど言いたいことがちょっと違う。

自衛隊だったり植物だったりそれはわりと自分の中では特殊な題材でどうしても最初は世界観の説明が多かったり、最初っから最後までテーマについての説明がついてきてしまう作品もあるんですね。植物図鑑なんてずーっと二人で野草の話していちゃいちゃして…ってのは別作品の話で。でもだからといってテーマが主役じゃない。ちゃんとそこに関わる自衛隊員だったり阪急電車に乗る人々だったりが主役。テーマはそれを味付ける役目。決して一番前には出てこない。ここが僕的には本当に好き。人間ドラマ?って言うのかな人の成長だったり、人々の関係の進展だったりそういうのが本当に大好きで大好きだから多分僕が有川浩さんを好きな理由はここにある。彼女が人を描くのがうまくて、マイナーテーマであってもちゃんとテーマの内容を疎かにせずに説明してくれるからしっかり感情移入してしっかり登場人物の感情の機微などを感じ取れる。それだけでね、そんなのに弱い僕はもうダメです。大好き。

 

3.ラブコメ、少女漫画ばりのニヤニヤ感

これは僕得な点。先ほども言いました。僕は自衛隊シリーズと植物図鑑と阪急電車しかまだ読んでいないのですが、これら全てに共通する特徴。それはラブコメ漫画かよ!ってほど甘い恋愛模様が広げられること。もう本当にあまあますぎてやばい。よく電車の中で小説を読む僕ですけどもう何度ニヤニヤしてしまったか。そのたびに口元かくして周り伺ってみたいなことしないといけない。つらい。でも最高。硬派なオタクには受けないかもしれませんが、わりとミーハー気質のある僕的にはもう本当にくっそ甘い恋愛展開してくれてありがとうございますといつも土下座してる。めっちゃキュンキュンする!

 

今回の作品もここらへんの3ポイントを外していない。自衛隊といえば救助活動が思い浮かぶ人が多いと思いますが今回は自衛隊という組織の中の広報に焦点を当てた作品。パイロットを不慮の事故でやめなければいけなくなった青年が次に所属することになったのが自衛隊の広報。そんな彼が出会うのは、完全に頭でっかちをこじらせている5年目のテレビ局の女の子!そんな若い二人が織りなすストーリーがもうね最高。彼らだけじゃない。広報室の面々も本当にキャラとしてみんないい。みんないい人とかそういう意味ではなく彼らにも彼らなりの悩みを抱えていて、決して若い二人だけにスポットを当てるのではなくちゃんとその同僚たちにもあて広報室の中で解消していき、だんだんと深まる広報室内の良い空気。なるほど、主役以外のキャラクターについてもちゃんと掘り下げてそれが広報室と関係有るところで行われているからちゃんと感情移入の段階を一歩一歩深めることができるんですね、勉強になる。

それでも最後は若い二人の独壇場ですよね。1年弱という長い付き合いを経てお互いのこともわかってきたかなと思ったら、あらら人の心は弱いもので、いや甘えていてしまったからあんな言葉を吐いたのかなと思わないところもないですが、まさかの関係がぶっ壊れるほどのひどい言葉を吐いてしまって…。どうなるのかどうなるのか、ドキドキしながら最後は一気に読み進めてしまいました。

僕が今まで読んできた有川浩作品に比べるとニヤニヤ度は抑えめ。でも今作はそれで良いのかなと思いました。自衛隊の広報とテレビ局員というだいぶ立場の違う二人(僕が説明すると多分うまく伝わらないのでこの立場の違いはぜひ作品を読んでわかってほしい)。そんな二人が最初は全くわかりあえてなかったのに一年たって、あーわかりあえたし甘えられるからじゃ一緒になろじゃありきたりなところがある。まだまだ若い二人は仕事においてもこれからやりたいことがあるだろうし、自衛隊員は転勤が非常に多い。そんなことを考えたらね、わかるなあと思いました。

今作もいっぱい泣いてしまいました。本当に人の成長とか人間ドラマに弱いんだなってつくづく思いますね。もっと涙の価値が重い男になりたい笑

是非皆さんに読んで欲しい作品の1つです。恋愛要素が薄めなんで苦手な人もとっつきやすいと思います。これが面白いと思えれば多分フィクション色強めではありますが自衛隊三部作も読めると思います。ぜひそこまでつなげてほしい!

 

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それでは今回はここらへんで